Webは中身が9割、だといいなー。

数ヶ月前に近所でひったくり事件が起きた。事件の翌日、警察の人が来て「昨夜、怪しい人物を見ませんでしたか?」と一件一件尋ねて歩いていた。その人が自宅に来た時、家族構成まで訊いてきたので、不審に思った私は「本物?」と逆に質問したところ、首にぶら下げていたバッジを快く見せてくれた。
警察のほうから来た人は2〜3分後に再び現れ、「容疑者が見つかりました!」とケータイを見せながら去っていった。
隣のおじさんが表に出てきて僕に訊いた。
「本物?」
「さあ?」

以上、前振り。(実話です)


人は、相手の肩書きや属性によって判断を左右されてしまいがちだよね?

  • 観測範囲の狭さがバレてしまう言葉「○○なんていない」

la_causette: 発言者が氏名と肩書きを名乗るのって現実社会では常識なのですが はてなブックマーク


“そこに肩書きがあれば世間がみるのは肩書きです”っていうけど,池田先生のご発言を「上武大学教授の発言だから」信用できるとか,mohnoさんの発言を「マイクロソフト(株)の従業員の発言だから」信用できるという人なんていないのではないですかね。

いや、いるでしょ。

Aさんの発言を聞いて、そのAさんの出身校や所属団体や勤務会社、思想信条・宗教宗派、国籍・性別・血液型、好きな動物は犬派か猫派か魚派(うおは)か?などの属性を一切無視して、純粋に発言内容のみに注目することができるならば、
「私は弁護士です。今すぐこの口座に100万円振り込んでください」
という電話を受けても簡単にダマされることはないのです。
でも、現実社会では振り込め詐欺の被害がなかなか減りませんね?被害者と被害額は今日も増え続けていますね?

「僕は孫だよ。おじいちゃん助けて!今すぐこの口座に100万円振り込んで!」との電話を受けて本当に100万円を振り込んでしまう人は、「孫」という属性に振り回されて電話の相手が本当に自分の孫かどうかを確認せずにATMへ走ってしまったのです。

「こちら社会保険事務所です。あなたに還付金がありますので、これからお伝えする手順に従ってください。そうすれば返還されますよ、お金が戻ってきますよ」との電話を受けて本当に従ってしまう人は、「社会保険事務所」という属性や「還付金返還」の言葉に振り回されて電話の相手が本当に社会保険事務所の人間かどうかを確認せずにATMへ走ってしまったのです。そもそもナゼ、お金が返還されると言うのにお金を振り込んでしまうのか?そりゃ逆だろ?と思う。(犯人の告げる手順がかなり複雑で、ATMの操作に慣れていないお年寄りは自分が振り込み手続きをしてしまっていることに気づかないらしい。)

  • それって、妄想ぢゃないの?


“そこに肩書きがあれば世間がみるのは肩書きです”っていうけど,池田先生のご発言を「上武大学教授の発言だから」信用できるとか,mohnoさんの発言を「マイクロソフト(株)の従業員の発言だから」信用できるという人なんていないのではないですかね。

小倉秀夫さん(id:OguraHideo)の論調に従うなら、「振り込め詐欺の被害者なんて存在しない」ってことになってしまい、それこそ現実社会を見ていないことになります。もちろん、OguraHideoさんがご自分の妄想――「現実社会・常識」という名の妄想――をブログに綴るのは自由ですよ?

振り込め詐欺被害の原因は「相手の肩書きや属性にコロッと騙されること」の他に、「音声のみの情報によって洗脳されること」があるのではないか?と私は思っていて、以前この記事→心までの到達力←に書きました。もし、この電話(音声)による洗脳の仮説が正しいとすると、多くの人々を洗脳するにはテレビよりもラヂオのほうが有効となります。(仮説です)

  • 宇宙人を発見しました!
  1. 「宇宙人を見た!」の日記が匿名ブログにUPされるのと大学教授ブログにUPされるのとでは信用度が違います。
  2. 「宇宙人が発見された!」との見出し記事が東スポに載るのと日経に載るのとでは信用度が違います。
  3. 「宇宙人を発見しました!」というニュースがTBSで流れるのとNHKで流れるのとでは信用度が違います。

それらの記事やニュースを見聞きした人たちは、「宇宙人が本当にいるかどうか?」を疑い検証する以前に、「大学教授が書いてるんだから事実でしょ」「日経に載ってるんだから本当だろ」「NHKが言ってるんだから信じるよ」という判断になってしまいがちなのです。
なぜ簡単に信じるのか?
発信元の属性(銘柄)で判断しているからです。*1
ここで、「いいや、俺は教授だろうが日経だろうがNHKだろうがスグには信じないよ。くもりなき眼で納得するまで確かめるよ」と反論する人は、まあ大丈夫でしょう。
でも、そーゆー属性リテラシーの高い人は意外と少ないだろうと思います。人はどうしても何かの属性によって判断を左右されてしまいがちなのです。もちろん私(takopons)も例外ではありません。私はできるだけ「何を言ったか」で判断しようと心がけていますが、どうしても「誰が言ったか」に左右されてしまいます。

  • 所属を明らかにするのは、信用度を上げるための手段

(実社会の仕事で取引先担当者との名刺交換をするような場合は別として)
ブログ上で、すでに社会的信用を得ている会社名や有名企業の所属、医師・教授・弁護士の肩書きなどを公表するのは、自分の信用度をUPさせるためです。

自分の所属や肩書きを公表せずに記事を書いている匿名ブロガーは、実名ブロガーに比べて信用度は低いです。匿名ブロガーは、自分の言葉のみで読者からの信用を得ようとしている、と言えます。

おかしな発言をしたら、実名だろうが匿名だろうがツッコミを受けます。ただし、実名ブロガーの場合は所属先へのツッコミがオプションとして発生する可能性があります。自分の信用度をUPさせるために肩書きを使っているのですから、その肩書き部分に対して突っ込まれるリスクも負う覚悟がおありなのでしょう?

  1. マルチ商法の宣伝に有名芸能人を起用したり、セミナー会場に市営公民館やその地方で名の通った地元の大型ホテルなどを選んだりするのは、マルチの信用度をUPさせるためです。
  2. マルチ商法が友人・知人を介して勧誘してくるのは、友人・知人との信頼関係を悪用するためです。
  3. デート商法が異性を介して勧誘してくるのは、冷静な思考能力を奪うためです。

発言者の所属や属性、肩書きや自分との関係をいったん全て排除して、相手の言説内容のみに注目して判断すれば、簡単に騙されることは減るでしょう。

実名・匿名の話題からマルチ商法の話になってしまったので以上。

*1:信用された団体(に属する人間)の発言であれば、発言内容を逐一チェックする手間が省けるからです。いったんは疑ってみて、検証・論考を重ねた上でそれでも「正しい」と判断できた場合のみ信じる、という面倒くさい手続きが省略できるからです。